コップの水と人事評価:見かた一つで真実はかわる

ここに水が半分入ったコップがあります。あなたはそのコップを見てどう思うでしょう?「半分しか入っていない」と思うでしょうか。それとも「半分も入っている」と思うでしょうか。あるいは「まだ半分注げる」と思った人もいるかもしれません。
「コップに水が半分入っている」という事象はまったく同じでも、見る人の視点(主観)によって、その解釈の仕方は異なります。 あなたが何を価値基準とするのか、つまり「コップにどれだけ水が入っているか」を基準とするのか、あるいは「どれだけ水が注げるか」を基準にするかで変わってきます。
あなたの基準(主観)によって、評価は変わるのです。同様のことが人事評価においても当てはまります。
人事評価による視点の影響
例えば、あるセールスマンが営業で大失敗をし、100万円の損失を出してしまいました。上司であるあなたは、この部下にどんな評価を下すでしょうか。
ただ「100万円の損失」という結果だけを見れば、今期の成績は低く評価されるかもしれません。しかし、その失敗が新しい商品の売り込みという難しい題に挑戦した結果だったとしたらどうでしょうか。
一方で、目立った失敗はしなかったものの、特筆すべき成果もなかった別のセールスマンは、中間のB評価になるかもしれません。しかし、彼が無難なセールスだけを行い、新しい挑戦をしなかったとしたらどうでしょうか。
主観が評価を左右する
結果だけを見れば、前者のセールスマンの成績は後者より劣ります。しかし、どちらの評価がより高くあるべきでしょうか。
「営業はあくまで結果がすべて」と考える上司もいれば、「挑戦を評価するべき」と判断する上司もいるでしょう。
「それなら評価基準に『チャレンジ』を追加すればいいのではないか」と考える人もいるかもしれません。しかし、その「チャレンジ」は明確に観察しなければわからないものであり、結果だけでなく、どの行動に注目するかという点も、最終的には上司の主観に依存します。
さらに「チャレンジ」という行動は、数値化することができません。その行動を50万円と見るか、200万円と見るかの判断は、上司の主観によるものになります。
上司の役割と評価の責任
だからこそ、評価において上司の価値観や経験則が重要になってくるのです。上司は部下をよく観察し、自分の頭で考え、自分の責任において主観的に評価しなければなりません。
部下の成長を促すために、上司自身もまた自己の視点を磨き続けることが求められます。それが組織全体の発展につながるのです。