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人事制度構築

ボーナスは差をつけるべき?スポーツから学ぶ「トーナメント理論」

スポーツのトーナメント戦にみられるような報酬体系を、従業員の給与体系に適用したら、その結果はどうなるでしょうか?

スポーツの世界では、優勝すれば大きな賞賛と報酬が得られます。しかしたとえ実力差は僅かでも、2位になればその報酬はぐっと下がります。これが選手たちの競争心を煽るのです。ではこれと同じ仕組みを、会社のボーナスにも組み入れたらどうなるでしょう。

トーナメント理論

つまり最優秀な従業員には大きなボーナスを、それ以下の成績の従業員には小さなボーナスを与えるというものです。こうすることで、全ての従業員が最優秀な成績を目指し、その結果として企業全体の利益も増える可能性があるのです。この考え方を経済学では「トーナメント理論」と呼びます。

多くの営業組織ではすでにこの報酬体系が採用されているかもしれません。事実、このトーナメント方式により、成果を上げている営業会社も多くあります。

しかし営業のような実力主義の仕事であれば、この制度もうまく機能するかもしれませんが、そうでない場合は、かえってパフォーマンスを落としてしまうことがあります。

トーナメント理論が失敗する例

たとえば、役職や階層が明確に決まっている組織では、下位の職位の従業員が高い成績を上げることは難しいでしょう。すると「どうせがんばっても高い報酬を得られないだろう」という考えが働きます。一方で、上位の職位の従業員はそこそこのパフォーマンスでも高い報酬を得ることができるため、余計な努力を払わないことになってしまうのです。1位と2位の実力差がすでに大きく開いている場合も、同じことが生じやすいです。

このような状況では、1位の従業員へのボーナスを少し減らし、2位以下の従業員にも適度なボーナスを支給するようにしたほうが、全体のパフォーマンスは向上します。


トーナメント式の人事制度は、場合によっては競争心を高め、パフォーマンスを向上させる効果があります。しかし特に年功序列的な組織では、報酬の不公平感を生む可能性もあります。それゆえ、この報酬体系は部分的にまたは特定のプロジェクトに限定して導入するのが最善の手段といえるでしょう。