売上があがっていないときにこそ使う言葉~危機感より期待感

このままの経営だと、あなたの会社の売上は大幅に落ち込み、赤字に転落してしまう状況を想像してください。この現状を打破するために、あなたは部下である従業員にどう働きかけるでしょう。
「このままでは会社はつぶれてしまう。なんとしてでも売上をアップさせなければならない」
従業員に危機感を持たせるために、そう力説するかもしれません。しかしこのアプローチでは、経営者が考えているほどに、従業員の行動を掻き立てることはできないのです。
ポジティブなイメージが行動を生む
スタンフォード大学のアレクサンダー・ジェネブスキーらは、慈善活動につかわれる資金集めで成功している写真の傾向を分析しました。
一枚目の写真には、男性が重い病気にかかり病院のベッドでぐったりと横になり、身体のあちこちにはチューブの管がつながれており、目には絶望の色が広がっています。
もう一方の写真には、日差しを浴びて生き生きと輝く幸せそうな若い女性が映っています。この女性は重篤な病を患っており、多額の資金を必要としています。

どちらの写真の方が多くの資金を集めることができたでしょうか。
最初の写真の方が感情を揺さぶられ、同情を誘います。ところが実際に資金が多く集まったのは、もう一方のポジティブな写真だったのです。人はネガティブな情報に触れると、無意識に目を背けてしまいます。気の毒だとは思いながらも、行動には移しづらいのです。ところが病気と向かい合って、健康を取り戻そうと奮闘しているポジティブな姿は、応援したい気持ちが高まり、実際に寄付という行動に移されたのです。
「ゴー(Go)反応」と「ノー・ゴー(No Go)反応」
人は悪いことよりも良いことを予測したほうが、行動が引き起こされやすく、このことは「ゴー(Go)反応」と呼ばれています。逆に悪いことを予測すると、恐れを感じ、硬直したりあとずさりしたりする「ノー・ゴー(No Go)反応」が引き出されることが、研究からわかっています。
もうおわかりでしょう。最初の経営危機に直面したとき経営者がとるべき行動は、危機感を持たせることではなく、従業員に希望を抱かさることなのです。
期待を伝える経営術
「いま売上は落ち込んでいるが、もし今度の新しい製品を早期に開発させることができ、市場での優位な地位を回復できれば、売上は確実に改善し、今期末には臨時のボーナスを支払うこともできるだろう」
そう伝えることができれば、従業員の士気も上がり、業績を改善することができるのです。
私たちはつい最悪の事態を想像して、危機感をあおりたくなってしまします。遅刻を減らす、浪費を減らすなど、良くない行動を抑制するには罰などのネガティブ情報は効果を発揮します。
しかし、未来に向かって行動を促すためには、ポジティブな情報と結びつけるほうが、人々のやる気を引き出させるのです。