能力を評価するのはやめてください!人事評価で人を育てる秘訣

8割が貧困層の地域にある高校に、新しく転任してきた校長のモリ―・ハワード。もちろん生徒たちの成績は最低です。ほとんどの生徒が進学することはおろか、無事に高校を卒業することさえ難しい状態でした。
しかし、彼はわずかの期間で生徒たちの成績を上げ、進学率を劇的に改善させたのです。そこには、ちょっとしたある工夫があったのです。
「Not Yet」まだできることがある
学校でも会社でも評価はつきものです。おそらく「S・A・B・C・D」といった5段階で評価されることが多いのではないでしょうか。もちろん「D」は落第点という意味です。しかし彼は「D」の代わりに「NY」という記号を使うようにしました。「NY」とは「Not Yet」の略。つまり「あなたにはまだできることがある」という意味です。
それまで「D」は、あなたは「能力がない」あるいは「才能がない」ということを暗に伝えるメッセージでした。それを彼は「あなたは学習目標に対して、まだ到達していないだけで、到達するにはさらに努力が必要である。でも目標への軌道には乗っている」というメッセージに変えたのです。
評価すべきは努力
「自分が「D」評価なのは能力がないのではなく、まだ努力が足りていないんだ、自分はまだ成長の過程にあり、頑張れば成績を向上させることができる」と思わせたわけです。
それにより生徒たちは「成功するにはどの部分を集中的に努力すればいいか」と前向きな思考に変わっていきました。
評価すべきは「固有の能力や結果」ではなく、努力や成長なのです。
会社組織であっても同じ
ある研究では、上司が「どれくらい進歩しているか」「誰が新しいアイデアを出しているか」といった部下の成長や努力に注目して評価している組織では、そうでない組織より「会社のためにもっと貢献しよう」と強くやる気を感じている社員が多く、業績を大きく伸ばしていたと、スタンフォード大学教授のキャロル・S・ドゥエックは述べています。
成績の悪い部下には「まだまだ改善と努力の余地がある」と伝え、成績の良い社員にも「期待以上の成長と努力がみられた」と伝えてみてはいかがでしょうか。きっと部下のマインドセット(考え方)は変わり、モチベーションが上がり、あなたの会社の業績も向上することでしょう。