長く勤めてくれる社員が忠実とはかぎらない

会社が良いときも、悪いときも辞めずに長く勤めてくれた社員は「きっと優秀にちがいない」そう直観的には考えがちです。
もちろん、長きにわたり会社を支えてくれた社員がありがいことに間違いありません。ただし、長く勤めているだけで必ずしも優秀とはいえない場合もあります。
会社に対する帰属意識「組織コミットメント」の違いが、パフォーマンスに影響しているのです。
2つの組織コミットメント
会社に対する帰属意識は「組織コミットメント」という言葉で説明されます。「組織に対して個々人が感じる一体感の強さ」あるいは「組織への関与の強さ」と定義されます。
この組織コミットメントは、次の2つに分類されます。
- ①情緒的コミットメント:感情や情緒面で会社に愛着を感じていること
- ②継続的コミットメント:損得勘定により会社に帰属していること
情緒的コミットメントは、今の「会社が好きだ」という気持ちから会社に帰属しています。結婚で例えるなら「好きだから別れない」「好きだから一緒にいる」ということです。
一方で継続的コミットメントは、会社を辞めてしまうことにより「今の会社を辞めても次の職が見つからないかもしれない」「たとえすぐに転職できても、今よりいい給料はもらえないかもしれない」という打算的な理由から会社に所属しています。
結婚でたとえるなら、「一緒にいればとりあえず生活はできるし、今さら新しいパートナーを探すのも面倒だし…」と言って、気持ちは冷めているのに一緒に暮らしている夫婦のようなものです。
組織コミットメントとパフォーマンスの関係
コネチカット大学のジョン・マシューらは、情緒的・継続的それぞれのコミットメントと成果の関係性を、上司の人事評価をモノサシにして調べました。
すると、情緒的コミットメントと人事評価の成績にはプラスの影響があったものの、継続的コミットメントにおいてはマイナスの結果が出たのです。
つまり損得勘定で勤務している社員のパフォーマンスは、むしろ平均より低かったということです。
昨今の求人事情ではできるだけ辞めずに長く勤めてもらおうと、会社もいろいろと試行錯誤していますが、ただ会社にぶら下がっているだけのような社員は、残念ながら組織のお荷物となってしまっているのです。
給料だけでなんとか社員を引き留めようとすれば、たしかに続けてはくれるかもしれませんが、継続的コミットメントはますます強くなり成果はあがりません。もっと会社の魅力を高め、愛着をもって働いてもらうようにマネジメントすることが大切なのです。