なぜ楽しそうに働く人から買いたくなるのか?【最新研究】

あなたの会社のスタッフは仕事を心から楽しんでいますか?
もし仕事を楽しくやっているとすれば、それはマーケティングにおける強力な武器になります。消費者は、楽しく仕事をしている人から商品やサービスを多く買うことが研究から明らかになりました。なんと購買確率が40%も高まったのです!
イキイキと仕事をしている人から買いたくなる心理は、なんとなくわかりますが、その効果は私たちが思っている以上にとても強力で、価格にさえ影響を与えます。そんな研究を紹介したいと思います。
実験が示した「楽しさ」の効果
オランダのティルブルフ大学のマーケティング教授アンナ・パレイらは、売り手が仕事を楽しんでいると消費者に伝えた場合、その購買行動がどう変わるか実験を行いました。
SEO(検索エンジン最適化)サービスを提供しているコンサルタントの広告に「SEOが本当に楽しい」と一文を付け加えて掲載したところ、そうでない広告に比べてクリック率がなんと40%も上昇したのです。
Instagram広告を使用した実験でも同様の結果が得られ、制作の楽しさについて言及すると、購入者の品質認識と支払い意欲が高まることが実証されました。
また、大学のキャンパス内で行われたフェアでパン屋を出店し、ブラウニー(焼き菓子)を販売しました。その際に「ブラウニーを焼くのが楽しい」と伝えた場合と、「ブラウニーが一番人気の商品だ」と伝えた場合で買い手の違いを比較しました。すると「楽しい」と伝えた方は、選ばれる確率が34ポイント高く、価格も20%増しでも購入したいというオファーをもらったのです。
「一番人気」という言葉もかなり強力なメッセージですが、それを上回る結果が出たことには驚きです。
なぜ「楽しさ」で購買が増えるのか
なぜ「楽しい」と伝えることで購入が増えたのでしょうか。買い手は「仕事を楽しんでいる=情熱をもって仕事に取り組んでいるはずだ、つまり品質が高い」と認識したからだと考えられます。それが購買意欲だけでなく、価格にも影響したのです。
同じ商品を買うなら、売り手がその仕事に情熱を注ぎ、やりがいをもって作っている製品を買いたいと思うのは、当然といえば当然のことです。その製品の品質もそうですが、そんな人を応援したくなる気持ちも作用したのではないでしょうか。
自分の仕事に誇りを持ち、自分の商品やサービスに自信をもって進めてくる営業マンからは、つい買ってしまいたくなるものです。
だからといって、あらゆる広告に「この仕事を楽しんでいます」と記載すれば売上が上がるのでしょうか。それが事実であれば別ですが、表面だけ取り繕っても最初のうちは売上が伸びても、いずれは消費者にウソだと気づかれます。そこで働くスタッフも、そんな経営姿勢に嫌気がさしてしまうでしょう。
大切なのは、スタッフが本当に今の仕事にやりがいを持ち、楽しく打ち込めるように仕事を設計することです。スタッフが楽しく仕事をすれば、集客も売上も自然と伸びていきます。
仕事を楽しんでいると価格を低くつけがち
ただし、この研究では「楽しく仕事をすること」について注意点も指摘しています。買い手は高い価格でも購入したいと意思表示しているのに対し、売り手は仕事を楽しんでいる場合、自分の製品に低い価格をつける傾向がみられたのです。
どうやら、仕事そのものを楽しんでいることで金銭以外の満足(内的報酬)が得られ、金銭的欲求は低めに設定されがちだということなのです。「自分自身が楽しく仕事ができ、お客さんが喜んでくれればそれでいい」ということなのでしょう。
料理も美味しく、店主もホスピタリティにあふれるすばらしい飲食店なのに、なぜか価格はとてもリーズナブルなお店をよく見かけますが、それもこういった要因からかもしれません。
いずれにせよ、仕事を楽しくできるようにすることは、マーケティング的にも有用な戦略と位置付けられます。そしてその商品・サービスを過小評価せず、自信をもって価値に見合った価格を設定することも大切だといえるでしょう。