もし新聞のサイズを小さくしたらどうなる?「経営改善の秘訣」

よく経営改善で企業を訪問すると、あきらかに非効率なことをずっとやり続けているケースを見受けることがあります。
私が「なぜこのやり方をずっと続けているのですか?」と質問すると、気まずそうな顔をしながら「うちの企業では、この方法でずっとやってきたんですよ。この業界ではこれが一般的なんです」と反論されます。
しかし、それが本当に一般的で正しい方法なのでしょうか。
なぜ新聞はあの大きさなのか?
みなさんは新聞がなぜあの大きさなのか、疑問を持ったことはあるでしょうか。私はあまり気にかけたことはなく、なんとなく新聞とはそういうものだと受け入れていました。しかしよく考えると、あの大きさの新聞を広げて読むには読みづらく、満員電車のなかでは小さく折りたたまなければいけませんし、テーブルで広げれば隣の人の邪魔になってしまします。
けれど、きっとあの大きさにはなにか別の特別な理由(コスト面や配達のしやすさなど)があるんだと反論されるかもしれませんが、決してそうではなかったのです。
経営学者のフリーク・ヴァーミューレンは、そんな新聞の大きさの「秘密」を解き明かしてくれます。
変えないことの方がリスクは小さいから
18世紀前半のイギリスで、新聞各社に新しい税制が課せられることになりました。それはページ数に応じて課税するというものでした。頭を悩ませた新聞各社は、その税制に紙面を大きくすることで対応したのです。
その後、税制は廃止されましたが、最近になって小型の紙面を使った「インデペンデント紙」が登場するまで200年近くに渡って、新聞は大きいままだったのです(実は大きい方が印刷コストは高いにもかかわらず)。明治時代、海外から印刷機を導入していた日本も、必然的に大きい新聞を印刷することになったのです。
一度決めて慣れ親しんでしまうと、それがいかに非効率であったとしても、よほどのことがない限り変えることは難しいものです。もし変更して不具合がでたり失敗すれば、それ見たことかと責任を追及されてしまうかもしれません。変えることより、変えないことの方がリスクは少ないのです。それが長年にも渡り慣習的なものとなっていればいるほどに。
悪しき習慣を断つ
同じようなことは様々な業界で見られます(おそらく税制が改正されても、日本特有の軽自動車というカテゴリーはすぐにはなくならないでしょう)。ちなみに業績不振に悩んでいたインデペンデント紙は、思い切って新聞のサイズを小さくしたことでコストを抑え売上を伸ばすことに成功しました。
業界やその企業が長年に渡り行ってきたことだからといって、それが必ずしも正しいとは限らないのです。悪しき慣習だということもあるのです。
そこに疑問を投げかけることは難しいかもしれませんし、あまりに慣れ親しんでいるため気付かないかもしれません。しかし、そういうところにこそ改善の余地はあるのです。