ビジネスパーソンなら絶対に押さえておきたい「センスメーキング理論」とは!?

たとえ間違った計画であっても”信じて行動すれば望む結果が得られる”ということを、前回「自己成就的予言」をたとえに(https://note.com/kozan5/n/n477d37f96d41)紹介しました。
ロンドンビジネススクールで教鞭をとるカール・ワイクは、それを「センスメーキング理論」という少し違った切り口から紹介しています。センスメーキング理論は、いま経営学のなかで最も注目されている理論の一つです。
センスメーキング理論とは
センスメーキング理論とは、不測の事態・事象に対して、そこに「意味づけ」を行いながら行動を起こすことで、組織に一致したある種のストーリーをつくりあげることをいいます。
ワイク教授は好んで、次のような逸話で説明しています。
あるときハンガリー軍が、アルプス山脈で軍事演習を行っていました。演習の一環として偵察隊が近くの谷間へ送り出されると、その直後、急に雪が降りだし吹雪となり、それは2日間も続きました。その間、偵察隊は軽装だったこともあり、すっかり道に迷ってしまいました。
吹雪のなか、自分たちのいる位置さえ確認できず、隊員たちはうろたえ「このままだと遭難してしまうのではないか」最悪の事態が頭をよぎります。誰もが不安の色を隠せず、うつむき加減で押し黙っていると、ひとりの隊員が荷物のなかから偶然にも古びた地図を発見したのです。
「隊長、地図がありました!」隊長は慌てて地図を受け取りじっと眺めると、しばらくして確信したかのように「これで帰れるぞ!」と力強く、隊員たちに向かって言い放ちました。

間違った地図
地図を見ながら「尾根がこういうふうに走っていて周囲の地形がこうなっているということは、どうやら我々はこの辺にいるのではないか」「ということは、こちらの方向に進んでいけば下山できそうだ」そう確認して、地図の上に印をつけながら下山し始めました。途中、尾根を越え、急な斜面を下り、悪戦苦闘しながらも、3日目になってようやくふもとのベースキャンプまで辿り着くことができたのです。
部下を死地へ送り出してしまったのではないかと悔やみながらも、無事生還することを信じベースキャンプで待っていた上官は、隊員たちの無事な姿にほっと胸をなでおろしました。
上官は「よくこの吹雪のなか無事に戻ることができたな」と労いの言葉をかけると、隊長は「この地図のおかげです」と、例のアルプスの地図を上官に見せました。すると、上官は大声で笑い、「こんな状況で冗談を言えるなんて余裕だな。これはピレネー山脈の地図じゃないか」。
隊員たちがアルプス山脈の地図だと信じていたものは、実はピレネー山脈の地図だったのです!
行動するれば道は開かれる
吹雪のなかで道に迷った隊員たちにとって、地図が正確なのか、そうではないかはあまり重要ではなかったのです。重要なのは、そこに地図があり、それを信じ、隊員たちが行動したことです。
いったん下山を始めれば、山の斜面や地形、尾根の形などからその地図に意味づけをし、ルートをつくり出していったのです。そして目的にたどり着いたときには、そこに新たな地図が描き上がっていたのです。
大事なことは方向を決め、行動を起こす。そこから新たな情報を得てさらに行動を起こす。なんとしてもこの苦難を乗り越えようと、信じて一歩ずつでも前進することなのです。