本当はウソだったはずの経営計画が現実になった!?「自己成就的予言」とは…

「売上を増大させよう!」「生産性をもっと高めよう!」そのために、様々な施策を練ったり、経営計画を立てるかもしれません。
けれど、必ずしもその意図が結果に結びつくという保証はどこにもありません。なぜなら、事前に「結果」とその「原因」を正確に予測することはできず、これをすれば必ず売上があがるという確約はないからです。
しかし、たとえその仮説(原因)が正しくなかったとしても、信じて行動すれば、望む結果を得られることがあるのです。
4つの工場で行われたウソの実験
カンザス州立大学の教授だったアルバート・キングは、ある工場で興味深い研究を行いました。各4つの工場から工場長を集め、次のように指示をしました。
(1) 工場1と工場2は、一人の工員が機械のセットアップと製品の検査の両方が担当できる「多能工化」の実験を行う
(2) 工場3と工場4は、工員が決められた時間で次の作業に取りかかれるようにする「時間短縮」の実験を行う
そのあとでさらに、キング教授はある仕掛けをしました。工場1(多能工化)と工場3(時間短縮)には、「過去の研究によれば、今回の施策は生産性を向上させるはずだ」と伝え、工場2(多能工化)と工場4(時間短縮)には、「今回の施策は作業環境(欠勤率減少)を改善させるはずだと」とウソをついたのです。
ウソが現実になった
キング教授がどんなウソをついたとしても、それぞれの施策が結果に影響を与えることはないはずです。つまり「多能工化」は「多能工化」の結果、「時間短縮」であれば「時間短縮」による結果が得られるはずです。
ところが、「今回の施策は生産性を向上させるはずだ」と伝えられた工場は、その施策とは無関係に生産性が6%向上していたのです!同様に「作業環境を改善させる」と伝えられた工場でも、欠勤率が12%減少していました。
一体どういうことでしょう?
つまり、どんな施策を行うかということより、どんな意図を持って取り組んだかということが、結果に影響を与えたということです。この結果に驚いたキング教授は、工場長による「自己成就的予言」が働いたのではないかと考えました。
自己成就的予言が未来をつくる
「自己成就的予言」とは、例え根拠のない思い込みであっても、思い込んでいるうちに本当にそうなってしまう現象のことを言い、すでに多くの研究がされている心理学分野の用語です。
あなたがそうなろうと信じて行動すれば、意識的かあるいは無意識にかかわらず、そうなるための行動と未来(結果)を導いてしまうのです。
ある意味では、どんな経営施策や計画を立てるかは関係ないのかもしれません。重要なのは、あなたがそうなると確信して(念じて)、そう行動することなのです。そうすれば、たとえ間違った施策であっても、望む未来(結果)が得られるのです。