明日からすぐ使える「失敗から学ぶ」を科学的に検証

「失敗から学べ」という言葉を、職場や学校で言われた経験のある方も多いのではないでしょうか。このよく使いまわされた「失敗から学べ」も、実は状況に応じて、学べるときと、そうでないときがあるのです。
玉川大学の松元健二教授らは、ストップウォッチを使ってとても興味深い実験を行いました。
ストップウォッチのデザインを選ぶ
実験参加者を集め、ストップウォッチを5秒ピッタリに止めるというゲームにチャレンジしてもらいました。このとき参加者は、自分でゲームのためのストップウオッチのデザインを好きに選べるグループ(自己選択)と、実験主催者があらかじめ割り当てたストップウォッチを渡されたグループ(強制選択)とに分けられました。
グループ1 ゲームのためのストップウォッチを自分で選べる(自己選択)
グループ2 ストップウォッチをランダム割り当てられる(強制選択)
次に、参加者の脳活動を調べるセンサーが頭に取り付けられ、ゲーム中にどのように脳が活動するかを観察しました。
すると、ゲームが成功した際は自分でストップウォッチを選べたグループもそうでないグループもともに脳のやる気にかかわる部位が活性化されていました。
ところがゲームを失敗したときは、強制選択のグループの脳の活動が低下したのに対し、自己選択のグループの脳活動は低下しなかったのです。

失敗してもやる気が落ちない
そしてゲームを何度か繰り返すと、難易度はまったく同一であるにも関わらず、自己選択グループの方が明らかに良い結果を出したのです。つまり自分で選んで行動したという”自己決定感”という感覚があると、失敗してもやる気を失わず、次の糧にしようとする心の働きが生まれパフォーマンスがアップしていたのです!文字通り「失敗から学んだ」のです。
たかがストップウォッチのデザインを選べたという些細なことであるにもかかわらず、パフォーマンスにこれだけ大きな差が生じたことは驚きです。

難易度はまったく同一であるにも関わらず、自己選択条件の方が、有意に成功率が高かった
自己決定感がやる気を維持する
よく「失敗は成功のもと」といいますが、強制的に他人から与えられた条件下では、あまり効果は得られなさそうです。逆に、些細なことでも自分の意思でやり方を決めることができると、失敗から学び次に活かそうとするのです。
仕事であれば、決められた手順どおりに行うことが求められることもあるでしょう。しかしそのなかでも少しだけ部下に選択できる余地を残すことで、パフォーマンスを向上させることができるのです。