難しい仕事は「潜在意識」にやらせない

今回は人間の脳に関するとても興味深い話を紹介します。
別にあやしい話ではないのでご安心を。
著名な学者であるカルフォルニア大学のベンジャミン・リベット教授は、人間の意思と脳の活動についてある実験を行っていました。すると、私たちの常識を覆すような実験結果が得られたのです。
リベット自身、その結果に驚き繰り返し実験を行ったのですが、何度やっても答えは同じでした。
意識はあとから遅れてやってくる
リベットが行った実験は以下のようなものでした。
実験参加者の頭に脳の活動を計測するための脳波計を取り付け、腕には筋肉の動きを検知する筋電計を取り付けます。その状態で被験者には手首を曲げるよう指示しました。被験者は好きなタイミングで手首を曲げられるのですが、そのタイミングは特殊な装置をつかって計測させました。

通常、私たちは、自分の手首を曲げようと思ったら次のようなプロセスを経るだろうと考えます。
①「手首を曲げようと思う」 ⇒ ②「脳が反応する」 ⇒ ③「手首が曲がる」
ところが結果は違いました。手首を曲げようと意識するその前に、脳が先に反応していたのです!つまり、こういう順番だったのです。
②「脳が反応する」 ⇒① 「手首を曲げようと思う」 ⇒ ③「手首が曲がる」
脳の反応(無意識)が先にあり、その反応を受けて「手首を曲げよう」ということを後から認識していていたのです。この実験から人間の脳には自分の意思とは無関係な無意識の領域が存在するということが、改めて示唆されたわけです。
ここからは私見も入りますが、なにかを行おうとするとき人は、意識できない無意識の領域で活動が始まり、その無意識を後から遅れて認識し、それをあたかも自分の意思で行ったと思い込んでいるだけなのです。
無意識の領域を使うことで効率化が図れる
どうやら人間は、無意識の脳の領域に頼って生活しているようです。しかしこれは決して悪いことではありません。
例えばキーボードに向かって文字を打つとき、あなたは意識せずとも文字を入力できているはずです。車の運転にしても、会話をしたり音楽を聴きながら運転にさほど注意を向けることなく、ブレーキやアクセルを使い分けています。もし意識しながらキーボードを打っていたら、打ちづらくて仕方がないことは容易に想像できると思います。
野球の大谷選手も球の軌道を読んで、それに合わせてバットを振ろうと意識してやっているわけではないのです。ちなみにプロの棋士は将棋の盤を見た瞬間に次の一手が頭に浮かぶそうです。これも無意識の領域が関係しているといえそうです。
つまり複雑な動作や判断になればなるほど、脳の無意識の領域を使わないと効率よく処理できないのです。
無意識の領域を活用する
車の運転も最初はぎこちなかったかもしれませんが、無意識の領域を拡大することによって、努力せず容易に運転できるようになります。
意識せずできるようになることで、様々な難しいことも即座に努力せず効率よくこなせるのです。
脳の無意識の領域にまで繰り返し覚え込ませる、無意識の領域を拡大させる、ことが大切なのです。そうすれば、努力せずともあとは勝手に脳が処理してくれるのです。