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人事制度構築

働かなくてもいい社会は「楽園」ではない

もし働く必要もなく、食べ物も住むところもあり、自由な時間がある暮らしを手に入れられるとしたら、あなたはそこに移住するでしょうか?
一見すると、理想の楽園のように感じるかもしれませんが、必ずしもそうとは言えないかもしれません。

ユニバース25

アメリカの動物行動学者のジョン・カルホーンは「ユニバース 25」というマウスを使ったある実験を行いました。
この実験では、マウスに十分な食料や水を与え、病気を予防し、天敵のいないまさに楽園のような環境をつくりました。その楽園でどのようにマウスの個体数が増え、どのような行動パターンによって社会を作り上げるのかを、観察したのでした。

個体数の増加とともに権力争いが起こる

予想通りマウスたちはねずみ算式に順調に繁殖を始めました。最初は8匹だったマウスが315日ほど経過すると、個体数は620匹にまで増加しました。

ところがこの頃になると、マウスの間で権力争いが始まり出したのです。それにより一部の強いマウスと、その他多くの力の弱いマウスという社会的階層が形成されました。

強いマウスは非常に攻撃的で、自分には何の動機も利益もなく他者を攻撃したり、ときには共食いにまで発展しました。

一方で権力闘争に敗れた弱いマウスは子育てが上手くできず、育児放棄をするメスのマウスが増加していったのです。子供の死亡率は90%にもなっていっていました。

引きこもりマウスの出現

そういった異常な社会構造のなかでは、通常のマウスの社会行動が学べず、縄張り意識もなく、繁殖行動にもほとんど興味を示さない、ただ食べて寝るだけのやる気のないマウスが増えていったのです。
このようなマウスは他のマウスと集団行動をすることはなく、1人で食事を摂り社会から次第に孤立していきました。人間で例えれば「引きこもりマウス」です。

通常、自然界であればこのような「引きこもりマウス」は生き残ることはできません。なぜならエサを求めて仲間と協力しながら働かなくてはいけないからです。ところが、食べ物も住む場所も十分にある実験室では、なにもしなくても生きながらえることができたのです。

このようなマウスは日を追うごとに増えていきました。

楽園がついに滅亡

560日目、マウスの数は2200匹まで増えましたが、妊娠するメスのマウスは著しく低下し、死亡率が出生率下回っていきます。あいかわらず「引きこもりマウス」は増え続け、繁殖行動は見られませんでした。
そして実験開始から1780日目、最後のオスのマウスが死亡し、ついに楽園は滅亡したのです。

与えられた環境ではやる気は起きない

この実験からどんなことが学べるでしょうか。なに不自由のない環境においても権力闘争はなくならいということ。そしてすべてが与えられる環境においてはやる気がなく、孤立し、ただ生命を維持するだけのマウスが増えていったということです。
エサや住処を確保するために働くということは、その意味以上に生きるうえで必要なことなのです。

もちろんマウスの実験が人間にもそのまま当てはまるわけではありません。しかし完全に無視することはできないでしょう。

ちなみにこの「ユニバース25」の「25」というのは、25回目の実験という意味で、25回すべての実験において同じ結果となったのです。