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人事評価や賃金制度、企業型DC(確定拠出年金)導入のポイントなど、経営者や人事担当者に役立つ情報を発信しています。
人事制度構築

人事評価で”自己評価”は行ってはいけないワケ(理由)

よく人事評価で「自己評価は行うべきですか?」と質問されることがあります。私はよっぽど優秀な人材がそろっている企業でもない限り、「自己評価」をすることをお勧めしていません。

なぜなら、自己評価には“ダニング=クルーガー効果”と呼ばれる誤った評価に対する偏りが発生するからです。つまり「能力の低い人ほど、自己評価を高くする」という偏重がみられるのです。

ダニング=クルーガー効果とは

ダニング=クルーガー効果とは、コーネル大学のデイヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーが行った実験に端を発します。

彼らが学生の成績と自己評価の関係を調べたところ、

1)成績が悪い人ほど自分が全体の中で占める位置を過大評価している
2)成績優秀者は自分のレベルを控えめに評価する

という傾向があることを発見しました。

なぜそのような現象が起るのでしょう。

過大評価している人は努力を怠る

自分の能力を実際より過大評価している人は、自身の能力が優れていると過信しているため、不足している部分を補おうとする努力を怠ってしまいがちです。だからいつまでたっても能力は低いままです。

一方で自己評価が控えめな人は、まだまだ自分は知らないことや足りていないところがあると自覚しているので、それを補うためのさらなる努力を惜しみません。

それによって、ダニング=クルーガー効果と呼ばれるような偏重が生じてしまうのです。

人事評価での落とし穴

話しを人事評価に戻すと、能力の低い社員ほど高い自己評価を付ける傾向にあります。すると上司は過大評価だとは思いながらも、その自己評価に引っ張られてしまう(これを「アンカリング」と呼ぶ)ことがあります。
さらには、実際の評価と自己評価の乖離の説明をすることを避けようと、甘い評価を付けてしまうかもしれません。
逆に、能力が高い社員であれば、その反対のことが起きてしまいます。

多くの企業で自己評価を取り入れているケースは多いと思います。もちろん、自分自身を内省することで改善されることもありますが、直接的に評価と結びつけることには注意が必要です。