スター選手はいらない?!WBCで日本が優勝した本当の理由

もしも、頭脳明晰で営業成績も抜群な優秀な社員ばかり入社してくれたら、あなたの会社の業績もたちまちに向上しそうです。そう野球のWBCの日本代表のようなチームです。
しかしそんなスター社員ばかり集めたからといって、必ずしも業績が向上するとは限らないのです。むしろ低下してしまうことさえあるのです。
優れた個体ではなく優れたグループが生き残る
進化生物学者のウィリアム・ミュアは、生物が生き残り進化するのは、もっとも環境に適合した個体であるというダーウィンの「自然選択理論」に疑問を抱いていました。
彼は進化の過程において重要なのは「個人としての自然選択」ではなく、「グループとしての自然選択」ではないかと考えていたのです。
つまり優れた個体ではなく、優れたグループが生き残るという説です。しかし当時、そんなばかげた説に賛同する学者はだれ一人いませんでした。
そこでミュアは、ニワトリを使ってある実験を行うことにしました。
並のニワトリの方が多くのタマゴを産む
もしあなたが養鶏場のオーナーだとして、より多くのタマゴを産んでもらいたいのなら、値段が高い栄養タップにのエサを与えるより、そもそもタマゴをたくさん産んでくれるニワトリを飼育したほうが合理的だと考えるでしょう。ミュアはそれを実験室のなかで行ったのです。
彼はより多くのタマゴを産むニワトリだけを、7世代に渡り交配させ、“スーパーチキン”をつくりました。それと同時に、タマゴを多く産むニワトリとそうでないニワトリが混ざった“並チキン”グループも交配させました。そしてどちらのグループがより多くのタマゴを産むか競わせたのです。
普通に考えれば、スーパーチキン・グループの方が多くのタマゴを産むということに異論はなさそうです。ところがそうはなりませんでした。結果は、並チキングループの方が160%も多くタマゴを産んだのです。
実をいうと、ミュアは途中で実験を中断せざるを得なかったのです。なぜならスーパーチキンたちは、互いに突つきあって殺し合いをはじめ、3羽しか生き残らなかったからです。一方、並チキンはケンカすることもなく、互いが協力しながら共栄していました。
人間でも協力した方が優れた成果を出す
マサチューセッツ工科大学の研究者たちは、「人」をつかって似たような実験を行いました。まず実験参加者を集め、IQテストをしてもらいます。そのうえでグループに分け、チームで取り組む課題を行ってもらいました。
すると最も成績の高かったグループは、IQが飛びぬけて高い人がいるグループでも、IQの合計点が高いグループでもなく、並ではあったが互いに協力したグループだったのです。
どんなに有能であっても、トップに立とうと競うことばかり考えている人ばかりのグループでは、結局はお互いが足の引っ張り合いをし、高い成果を上げることはできません。たとえ並の能力であっても、互いが協力し合えば、多くの成功を収めることができるのです。
WBCでなぜ日本は優勝できたのか
WBCで日本代表が優勝したのは、必ずしもスター選手が多くいたからではありません。もしそうだとしたら、アメリカ代表が優勝していたとしても不思議ではありません。
チームの若手を気遣い常に声をかけていたダルビッシュ選手、ムードメーカーとしてチームを元気づけたヌートバー選手や大谷選手、そしてそれらをまとめチームを優勝へと導いた栗山監督の存在があったからこそなのです。