たったひと言で生産性を1.5倍に上げた感謝の言葉とは!?

もしも、たったひとこと従業員に声をかけただけで、彼らの生産性が1.5倍に上がったとしたら!?「そんな都合のいい話なんてあるわけない」そう思われるかもしれません。しかし誰でもできる簡単な方法で、生産性を劇的に上げることができるのです。
ハーバードビジネススクールの行動学者であるフランチェシカ・ジーノらは、そのことを実証するとても興味深い一連の実験を行いました。
感謝のメール実験
ジーノ教授らは実験のために、ある求職者のお世辞にも上手とはいえない職務経歴書を、より良く修正するためにフィードバックしてくれる参加者を募りました。
参加者たちには10ドルのお礼が支払われ、その職務経歴書に対して修正箇所やコメントを添えてメールで返信するよう指示しました。参加者がメールを送ったあと、ジーノ教授は求職者になりすまし、参加者の半数に次のようなメールを送りました。
親愛なる〇〇様 私の職務経歴書に対するフィードバックを確かに受け取りました。
残りの半数にはもうひとこと添えて
親愛なる〇〇様 私の職務経歴書に対するフィードバックを確かに受け取りました。本当にありがとうございました!感謝の気持ちでいっぱいです。
ここで参加者にはお礼が支払われ「このプログラムはこれで終わりです」と告げられました。しかし本当の実験はここからだったのです。翌日、別の求職者から自分の職務経歴書も手直ししてくれないかとメールが届いたのです。(もちろんこれはジーノ教授からのものです)
感謝を受け取った人は他人にも親切にする
最初の「受け取りました」とだけ記されたメールを受けとった参加者のうち、この求職者に協力したひとは25%でしたが、感謝の念を示したメールを受け取った参加者は、50%以上がこの求職者を手助けしたのです!
感謝の念を伝えられた参加者は、自分が高く評価されていると感じ、その気持ちが別の求職者も助けようとする行動につながったのです。つまり少し感謝されただけでも、かなりの影響力がでるということがこの実験からわかります。
そこでジーノ教授らは、実際の現場でも同じようなことを試してみることにしました。
募金係に感謝を伝えたら生産性が1.5倍に!
今度は、大学の卒業生から寄付金を集める募金係に参加者になってもらいました。彼らの仕事は、卒業生に電話をかけて寄付を依頼するのですが、必ずしも全員が気持ちよく応じてくれるわけではなく、むしろ冷たくあしらわれることも多くありました。
そんな彼らに対し、担当責任者がオフィスを訪れ「一生懸命働いてくれて、本当に感謝しています。大学に対するみなさんの貢献に心から敬意を表します」とひとこと伝えました。
すると、なんと1週間の平均的な募金係がかけた電話の本数が50%以上も伸びたのです!感謝の念をひとこと伝えただけで、生産性が1.5倍もアップしたのです!
感謝の念の表れによって気分がよくなっただけでなく、募金係の社会的価値観(自分の仕事には意義がある)の感覚が高まったことが、電話の本数の増加につながったこともわかりました。
感謝の念は、その人の自己評価を高まると同時に、社会的価値観も高めます。それがモチベーションをアップさせたのです。「感謝の気持ちを素直に伝える」これほどコストパフォーマンスの高い生産性向上の手法はほかにはないでしょう。