やる気は内から湧いてくるのではない。周りが与えてくれる?!

自身もかつて競泳選手だったハミルトン大学の社会学者ダニエル・チャンブリスは、6年間に渡り優れた競泳選手の特性ついて調査研究を行いました。練習方法やコーチの教え方など、定性的観点から徹底的に調べました。すると、そこから二つの事実が判明しました。一つ目は当たり前ですが、優秀な選手は何千時間もの厳しい練習を積み重ねてきたということです。
しかしもう一つは「偉大な選手は偉大なチームに属している」という事実だったのです。つまり選手のパフォーマンスは、その選手がどういった環境に身を置いているかによって違いが生じるということだったのです。
環境があなたを変える
私たちは何かビジネスで大きな成功を収めた経営者をみると、もともとの優れた能力やあるいは強い精神力が備わっていたからだと考えがちです。もちろんそれもあるとは思いますが、ひょっとすると単に環境に恵まれていただけかもしれません。つまり自分の能力やチャンスを活かせる環境に身を置いていたということです。
事実、ハーバード大学が行ったある調査では、人が社会的経済的成功を収められるかどうかは、「住んでいる場所に大きく依存する」という研究結果が得られています。成功した企業がシリコンバレーに集中するのではなく、シリコンバレーに移転するから成功するのです。
なぜ野球の田中将大はアメリカメジャーリーグで活躍できたのか?
投手の田中将大選手は、かつて甲子園の舞台で当時早稲田実業の投手であった斎藤祐樹選手と決勝戦で争いました。試合は白熱し、延長15回でも決着がつかず、37年ぶりに決勝引き分け再試合となりました。しかし、再試合では3対4で惜しくも敗れてしまいました。
その後、田中投手はご存じのとおりプロの道に進み、メジャーリーグでもニューヨーク・ヤンキースで活躍しました。一方、甲子園で田中投手は破った斎藤祐樹は、早稲田大学卒業後プロの道に進んみましたが、目立った活躍はみられませんでした。
ではなぜ、甲子園では競い合ったふたりが、その後これほどまでに差が広がってしまったのでしょうか。その一つの理由に、田中選手が高校卒業後、プロという厳しい世界に飛び込んだということがあげられるのではないでしょうか。つまり自らを厳しい環境に置いたのです。
一方で斎藤選手は、プロの世界に入ることをためらい、大学に進学すことを選びました。
もちろんそれだけが理由ではないとは思いますが、田中選手はプロのなかでもまれることによって、大きく成長できたのです。メジャーリーガーになれたのも、メジャーリーガーになる実力があったからだけではありません。メジャーリーグに身を置いたから、メジャーリーガーになれたのです。
楽に成功したいなら、成功している人と付き合え
人が自分の意志力だけで成功を勝ち取ろうとすることは難しいようです。それよりも向上心の高い人の集まりに参加したり、実際に成功している人たちと付き合ったりと、いま自分が置かれている環境を変えてしまうが手っ取り早そうです。そういった集団に囲まれていれば、自ずと切磋琢磨するものだからです。
先述した競泳選手を研究したチャンブリスも述べているように「成功するには大変方法と楽な方法がある。大変な方法は独力で頑張ること、楽な方法はそういった意識の高い集団のなかに入ってしまうこと」なのです。