アイデアはシャワールームから降ってくる

古代ギリシアの科学者であるアルキメデスは、湯舟にボーっと浸かっているときにアルキメデスの原理をひらめき、「ユーレカ(われ発見したり)」と叫んだのは有名な話です。
シャワーを浴びていたり、1人でドライブしているときに、急にアイデアが浮かんできた経験のある方も多いのではないでしょうか。アイデアは頭をかきむしってひねり出すものではないのです。どこからともなく湧き出てくるものなのです。
デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)
1940年に出版され、いまなお売れ続けているロングセラー「アイデアのつくり方」のなかで著者のジェームス・ヤングは、アイデアを思いつくには、とことんまで考え抜いたら、いったんそのアイデアから離れてボーっとしろと述べています。
当時その理由については明確にわかっていませんでしたが、近年の研究によりその仕組みが解明されてきました。
実は、人の脳は考え事をしていないときも、潜在意識下では活発に活動しており、頭の中の情報をたえず整理しています。無意識下の状態で、脳は断片的な記憶をつなぎ合わせ整理し「答え」を探しているのです。この働きは脳の「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」と呼ばれています。
いったん仕事から離れる
神経科学的には、クリエイティブなアイデアが仕事中に起こる確率はわずか16%にすぎないといいます。むしろ通勤途中やシャワーを浴びているときにアイデアが降ってくるのです。
もし仕事に行き詰ったら、いったん机から離れ、コーヒーブレイクするなり、ちょっと散歩する方がよさそうです。アイデアは机に向かって考えているときではなく、シャワールームでひらめくのです。
休日に仕事から完全に離れ、映画を見たり、バカンスを楽しんで脳を十分に休息させリセットすることも、新たなアイデアを沸かせるのには効果的です。そういった意味では、最近流行りのワーケーション(リゾート地で休暇を取りながらテレワークすること)も理にかなっているかもしれません。
集中した後でないとアイデアは降ってこない
ただし、仕事に集中し懸命に考え抜かない限り、休息中に素晴らしいアイデアが降ってくることはない、ということには注意が必要です。
アイデアのための情報や資料を集め、思いついたことを書き留め、それらを整理し、やり切ったと思えるとこまで考え抜く、その過程があって初めて、脳が無意識下(デフォルト・モード・ネットワーク)で働いてくれるのです。
集中し考え抜いたら、いったん手放す。そうすることで、あなたにも思わぬアイデアが降ってくるかもしれません。