なぜ「人」を増やしても仕事は遅れてしまうのか

遅れている仕事や残業の多い部署に対して、追加的な人員を投入するのは当たり前の施策かもしれません。
しかしよく思い出してください。必ずしもそれが問題解決につながらなかったことがあるのではないでしょうか。
実は追加的な人員投入がかえってプロジェクトを遅らせる原因になることがあるのです。
ブルックスの法則
マイクロソフトの開発エンジニアだったフレデリック・ブルックスは、名著「人月の神話」のなかで
「遅れているプロジェクトへの追加要員は、そのプロジェクトをさらに遅らせるだけである」
と述べました。
彼はその主な要因を3つ挙げています。
1 新たな担当者を仕事に就かせるための教育にかかる時間的ロス
2 チームのコミュニケーションが複雑になることによる時間的ロス
3 仕事を分業するのには限界がある
3つ目の「仕事を分業するのには限界がある」とは、子供を5か月で出産させるために、もう一人妊婦を増やしても意味がないということです。
ネジを締めるといったような単純な作業ならともかく、例えばソフトウェア開発のような複雑な作業になれば、さらなる人員補充はかえって仕事を遅らせてしまうのです。
烏合の衆をつくっただけ
私自身の経験からもう一つ追加すれば、仮に上手く追加要員を受け入れられても、その分他のメンバーの業務量が薄まっただけで、結局チーム全体としてのアウトプットはほとんど変わらないというジレンマです。言葉は悪いですが、”烏合の衆”をつくっただけということです。
では、どうすればいいのでしょう。既存のメンバーに頼るほかないのでしょうか。
転ばぬ先の杖
もし解決策を一つ挙げるとすれば、事前に業務量を予測し、忙しくなる以前に人員を追加投入するということです。それには高度な経営的意思決定を要します。まだ忙しくない部署に先行投資的に人員を追加するということには、追加コストに対するリスクが伴うからです。
しかし、忙しくなってから人員を投入する判断なら誰にでもできます。先の先を読んで先行投入することができるのが、優れたマネジャーなのです。